17.***贄代***

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17.***贄代***

 失敗した……中将の地位にいる男は青ざめた。帝や大臣の覚えめでたい陰陽師を貶めて()()()()()()()()()()()()()()()と思っていたのだ。  だから息子を陰陽師の屋敷へ偵察にやった。最上という陰陽師の異常な能力を報告されるや、すぐに糾弾して噂を広める。そこに己の意志が存在しないと気付かぬまま、操り糸に従って動いた。  他の貴族達も不満があったのか、一緒になって騒ぎ始めた。広がる噂に不思議な満足と達成感に包み込まれる。心地よさに溺れて思考を放棄した結果が、これだ。  陰陽師たちが淡々と説いた状況に、貴族はみな我に返った。帝の覚えめでたい存在を罵った責任を、彼らは負わないだろう。当然、誰かを悪者にして押し付ける。そして……今、その標的は自分自身だった。  誰も庇わない、誰も許さない、誰も助けない。  地位も荘園も奪われてしまう。混乱した男は悲鳴を上げて逃げ出した。中将の悲鳴に、最初に反応したのは貴族達だった。責任を取るべき獲物が逃げた状況に、慌てて彼を引きとめようと追いかける。     
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