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「ほら、アカリも……」
腕を掴んで引き起こし、半透明になっている神様を抱き上げ、隣に用意されていた褥に横たえた。着物は新しく用意した物だから、透明な人形に着せた形で不自然に膨らんでいる。
真桜の目にアカリは視えているが、きっと只人には見えない。
先日無断侵入した貴族に騒がれたため、屋敷に部外者が入れないよう結界を張った。通常より強い結界は、真桜が招いた者以外を排除する。その結界をすり抜けた式神は、室内の惨状に目を瞠った。
夜通し都を守った華炎は厳しい顔で真桜に向き直る。
『なんという、……主よ、いま少し…』
節度を持てと続くはずの説教を、真桜は手を上げて遮った。口元を押さえて板廊下の端で蹲る。吐き気に襲われた主に呆れ顔だが、華炎はその面倒見の良さを遺憾なく発揮した。主の背を擦りながら、寝着の上に1枚羽織らせる。
「うっ……気持ち悪っ」
『飲み過ぎだ。朝餉は重湯にするぞ』
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