01.***不穏***

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 晴れた空を見上げ、ひとつ欠伸をする。それから目の前の式占(しきせん)用の式盤(しきばん)を眺めて少し考え込んだ。 「どうした? 真桜」 「ん、休みたいな……と」  サボる為に式盤を引っ張り出したのだ。霊力が薄いそこらの陰陽師もどきと違い、闇の神王の血を引く真桜に占盤は必要ない。夜空の星から吉凶を読み、天候を操り、神々を降臨させる。闇の神族の巫女であった母の霊力が高かったことから、人として受け継いだ霊力も豊富だった。 「物忌(ものい)みでよいではないか」  アカリの指摘にうーんと唸る。実は昨日も物忌みを使ったので、出来たら別の理由を()()()()。そのための式盤だった。本来そんな邪な目的で使っていい道具ではないが、真桜は気にしない。 「この辺りが凶相だよな」  同意を求めるが、真桜ならば祈祷せずとも害がない程度の災いしか読み取れない。だがアカリはそもそも人の世の倣いに疎かった。必死に出仕する貴族や陰陽師の様子を、奇妙だと捉えている。そのため遠慮なく頷いた。 「ああ、休むがいい」 「文を飛ばしておこう」     
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