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「まあ、待たれよ」
北斗が冷めた声で貴族達を留めた。逃げていく中将の背中が遠ざかるのを見送りながら、北斗は黒い瞳を細めて口元に笑みを浮かべる。冷たい声に込められた力に足を止めた貴族達は、青ざめた顔で後ろの男に向き直った。
「中将殿を悪者にするのは簡単だが、貴殿らも同じ行為をしたのであろう? 都一の陰陽師を化け物呼ばわりし、生贄にしろと叫んだ事実は言霊となって世に刻まれている」
僅かに顔を伏せて語る声は、貴族達を震え上がらせた。恐怖と混乱を煽る目的で、意図的に彼らから視線を逸らす。同時に声を低く抑え、口元の笑みを見せつけた。
「生贄が必要ならば、陰陽師より若く美しい姫君が望まれるだろう。さて、どちらの姫が名乗り出てくださるか」
ぐるりと貴族達に視線を流す。一斉に顔を背けたり視線を伏せる連中に、北斗は口角を持ち上げた。脅すのはこのくらいで足りるか。
友人を罵られた北斗は、当事者以上に腹を立てている。真桜本人が報復する気持ちを持たないなら、少しくらい意趣返しをしても罰は当たらないはずだ。
「なあ……どうする?」
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