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「なぜ、そうなる」
「お前がその貴族を放置したからじゃないか」
「だって自分の屋敷だぞ? 式神使おうが術を揮おうが、オレの領分だし勝手だろ」
陰陽師が自分の屋敷で式神や陰陽術を使って何が悪い。真桜の言い分に、周囲の陰陽師たちに同情の色が浮かんだ。彼らも同様に式神やら式紙を使うのだ。
勝手に不法侵入した挙句、腰抜かして逃げる貴族にどうしろと? 何より、陰陽師から術や式紙を奪ったら何も残らないのだが……。
そもそも…幽霊が出た、妖が怖いとすぐ泣きつくくせに、陰陽師を蔑ろにする貴族が多すぎる。いっそ泣きつかれても無視していいなら、少しは陰陽師を敬ってくれるのか。ならば、連中に実害が出るまで放置してやるのも一手だ。
物騒な考えが真桜の脳裏を過ぎる。
「お前、怖い顔してるぞ」
「いや、いっそ役目を放棄してやったら、もう少し陰陽師の地位が上がるのではないかと思った」
「思うのは自由だ……」
北斗は呆れ顔で首を横に振った。声に出すなら、さほど思いつめていないと分かるからだ。本気で考えていたら、真桜は絶対に口にしない。いきなり行動に移して徹底的に敵を殲滅する部類なのだから。
「最上殿、主上から…」
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