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04.***酒精***
北斗が持ってきた新酒が当たりだったため、飲みすぎてしまった。二日酔いの頭痛に顔を顰めながら起き上がり、散らかった部屋に溜め息をつく。
華守流は情報収集に出ているし、華炎は都の警護と巡回を任せた。アカリは酔いつぶれて、昨夜はえらく絡んできたので二日酔い確定だろう。北斗はまだ寝ている。
つまり、大惨事の部屋を片付けるのは自分しかいないわけで……。
もう一度溜め息が漏れた。
幸いなのは、今上帝である山吹の采配で、ここ数日は物忌みとして引き篭もりが許されたこと。出仕しなくて済むので、遠慮なく寝転がっていられる。
「北斗、お前は仕事だろ」
蹴飛ばして友人を起こし、転がった酒器を拾う。白い壷状の瓶子は縁が割れていた。そういえば昨夜のアカリが放り投げた……気がする。
「しょうがないか」
指先で呪をきって、割れた瓶子を供養しておく。酔っ払いの行為とはいえ、申し訳ないことをした。庭の片隅に埋めてやる。元は土から生まれた焼き物だから、いずれまた土に戻るだろう。
紫陽花の茂みの足元に埋めた瓶子の白い尻が少し覗いているが、二日酔いの真桜は埋め直そうとせずにふらふらと戻ってきた。
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