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03.***思惑***
結局、山吹からは「いろいろ気をつけてよね、苦情来てるよ」程度の軽い叱責があった。帝という立場上、貴族からの嘆願は無視は出来ない。しかし陰陽師を敵に回す真似もしたくないのが本音だった。理解できるので、素直に「騒がせた」と頭を下げる。
「でも、変だよな」
真桜は陰陽寮の片隅で、顛末書を作りながら首を傾げる。
勝手に侵入した貴族の息子とやらも問題だが、彼が一人で騒いだにしては噂の広がりが早すぎるのだ。少なくとも中将である父親の人脈があるとしても、まだ『噂』段階の筈だった。
真偽を確かめずに怖がる輩は珍しくないが、いきなり陰陽師を疑い貶める者は少ない。陰陽師を敵に回すということは、呪詛の可能性を考えるからだ。
有能な陰陽師ならば、他の術師を出し抜いて確実に己の敵を仕留める。都一の陰陽師の肩書きを持つ真桜の呪詛を防ぐ術師は存在しないのだ。それこそ神族の加護でもなければ、こんな馬鹿な行動は起こさないだろう。
「誰が黒幕か」
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