富崩れ

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 一通り話は終わりテレビスタッフも帰って行く。 「それでは私達はこれで失礼しますので」 「ああ、ご苦労様です。お疲れさまでした。」  満面の笑みでテレビクルーを見送る親父。 「じゃ、私も一度戻るね♪」 恵美も自分の家に帰って行った。  夕食時。さっきまでの騒動はもうなく、親父と二人で食事をとるいつもの風景。まさかあんな大仕掛けでくるとは思ってなかったエイプリルフール。考えることが大胆だよな……  親父が俺に話しかけてきた。 「明日から海外だ」 「え?なんて?」 「海外だ」  何を言ってるんだ親父。ふと充電器に刺さったスマホを見るとずっと光っている。 いまだに着信は続いているように見える。  あれ?あの法律ってそもそも嘘だったのか?いや、随分と前から報道されてたじゃん。親父の件は嘘だよな。じゃあ、誰が当たったんだ?  テレビではまだ親父のニュースをやっている。おい、なんで偽番組がまだやってんだよ。  親父は黙って食事を続けた……  まさかと思いながらも俺は親父に尋ねた。 「本当は当たってるの?どこまでが本当でどこからが嘘なんだよ……」 「50億だろ?正直殺されても不思議じゃない額だ。実際この騒ぎだ。とりあえず俺が死んだことにすれば少しは同情が入るだろ。その間に海外だ。」  ウチの親父にこんな行動力があったとは知らなかった。 浮かれるどころか身の危険を感じて色々と手を回し、そして国中の人々を欺いているのか! 「え、じゃあドッキリはなんだったんだよ。」 「ちょっとしたおふざけだ。テレビクルーは雇った。なんせ金はあるからな。やってみたかったんだ。」  なんだよその余裕は! 金持ちになるとここまで余裕が出来るのか? 「恵美は?」  親父は食事の手を止めて俺に話し出した。 「あの子も海外に連れていく。」  全く俺は意味がわからなかった。 「なんでだよ」 「今日、籍を入れた。お前のお母さんだ」  全く理解できないぞ。籍? お母さん? 「アタル……お金の力ってすごいな……」  親父…………  翌朝、俺と親父、そして恵美の三人は羽田空港を飛び立った。
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