富崩れ

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 今年から特別宝くじ法案が施行されるらしい。  4月1日。今日がその日だ。  俺の名前は須藤アタル。今年から高校2年生。まぁ、だからと言ってなにか当たったことなんかない。今はガッツリ春休みだ。  午後0時。抽選の時間だ。一応、テレビは点けているが休みボケで頭がボーっとしている。  テレビからキャスターの声が聞こえてくる。 『・・・・ユキオさんです。おめでとうございます♪』  ほら、外れた。いいな50億円。ユキオ、ユキオ…………幸雄。画面には『須藤幸雄』の文字が!  親父じゃねーか!!!  ちょっと心拍数がやばい、やばい、やば……マテマテ、同姓同名ってあるじゃん。それじゃねーか? 『住所は東京都足立区◯◯の。。。』  ウチの住所じゃねーか。個人情報保護法はどこいったんだよ!!  次の瞬間、家の電話が鳴る。俺のスマホも鳴る。なんだ異常なスピードでメールが来てるぞ。  待て待て非通知で電話かけてくんなよ。  自宅の電話に出た。 「あ、久しぶり、元気してた?俺だよ俺!」 ………ハハ、ないだろ……  電話を切った。瞬間、即座に電話が鳴る。 今は電話線を抜くことにした。 スマホはマナーモードで音とバイブは消して充電器に繋いだ状態にした。  この宝くじ法案は元々は従来の宝くじに対して当たった人がいないのではないか?という疑問とクレームから出来た。  仮に当たっても政府の要人で当選金は全て回収されてるんじゃないかとか色々言われている。 とうとう詐欺呼ばわりまでされるようになった政府が考えた法律だ。  簡単に言うとこうだ。政府がランダムに当選者を選択して全国ネットで発表するって法律。これで嘘はないだろという一方的な内容だ。  通常の宝くじを実名公表するだけじゃだめなのかと議論されたが、現行の法律では難しいらしく、ならばと全く新しいものを持ってきた感が非常に強い。 そもそも宝くじという概念を完全に無視しており、資金調達は宝くじの年間利益から捻出するという不公平極まりない内容である。  金額は50億円という破格。まぁ欲しいのは欲しいけど現実的じゃないし、全国民対象だからこれといって手続きも不要なのでさほど関心もなかった。  ウチは俺と親父の二人家族で分譲マンションに住んでいる。親父は広告代理店の下請けっぽい会社で働いている。正直、内容までは知らない。
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