富崩れ

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 そんな家庭に50億だ。なんかピンとこない数字だな。ただ、それだけあればもう働かなくていいな。なんだろう、堕落した人生を想像しちまった。  とりあえず当たったのは親父だ。親父が帰ってくるのを待つしかないよな。  1時間ほど経つと1Fエントランスのモニターホンが鳴りだした。そりゃそうだ。テレビで住所言ってたもんな。つか、既に同じマンションの住人が挨拶に何人も来てるけどな。  ピンポーン。  またインターホンが鳴った。いかにもテレビ局って感じの女性レポーターがモニターに映っている。こういうときオートロックで良かったと思う。  たぶん親父の方もいろいろ連絡が来てるんだろうな。電話したくてもスマホを触りたくないな。  個人名が晒されているからか、宝くじの報道が何度もされている。学校が始まる頃には間違いなく有名人だな。俺、先輩とかにたかられるんじゃねーか?  テレビでは時々エイプリルフールの話題もあったから、 騙されてんじゃねーかなと思ってパソコンでネットを開いたが しっかり親父の名前がトップニュースになっていた。 夕方が近づいた頃だった。  ピンポーン。モニターホンが鳴った。しかしこの音は玄関前からの音だ。またマンションの住人だ。  モニターホンは建物のエントランスと家の玄関前の二カ所と繋がっている。どっちのモニターホンからかは呼び出し音で判別できるようになっている。  モニターホンには同じ階で幼馴染の恵美が映っている。最近は学校も違うし話なんてしてなかったのにな。  宝くじのせいか…… まさかな。もしかして、この機会にあんなことやこんなことを。 正直、俺はちょっとエロい想像をしてしまった。  玄関を開けると恵美が立っていた。私服姿を見るのは久しぶりかもしれない。 「久しぶり♪」  ちょっと照れた感じの恵美は思った以上に可愛く思えた。 「どうした?」  まぁ、なんとなく理由はわかってるんだが一応聞いてみた。 「決まってんじゃん。ご・じゅ・う・お・く・えん♪」  以外と素直に認めたのには驚いた。てっきり知らない素振りをして人間の浅ましい姿を見ることになると思っていた。 「別に俺が当たったわけじゃないぞ。」 「そうだけど……いずれ相続するんじゃない?」  こ、こいつは恐ろしい。そこまで考えたうえでの行動か! ただ、長い付き合いでもある。とりあえず客として招き入れた。
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