富崩れ

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 久しぶりにウチに入った恵美は部屋を見渡す素振りは見せるものの特に今までとは変わらない。逆に俺の方が緊張していたっぽい。  点けっぱなしのテレビには知った顔が映っている。親父だ。 「おいおい」 「きゃー、お父さーん♪」  凄い報道陣の数だ。まさかインタビューとか受けて調子に乗ったことを言ったりしないだろうな。  場所はどうやら職場の前だ。今から帰るなら帰宅は少し遅くなるだろう。 「あのさ、言い方が悪くなるけど、お金目当てなら帰ってもらっていいかな?」 「あらぁ?アタルは体目的で私を家に入れたんじゃないのぉ~?w」    なんてストレートな…… 「なんてね♪私がお金目当てできたと思ってるの?」 「違うのかよ」 「保護者として見にきたのよ♪」  俺は幼い頃、いつも恵美に守ってもらっていた。その名残なのかどうしても立場が変わらない。  既にマンションのまわりには記者らしき人が集まっていた。おいおい、警察が配置されてるじゃんか。親父に電話したくてもたぶん親父の携帯も俺と同じだろう。  そうだ、パソコンだ。家のパソコンから親父のパソコンにメールすれば。  早速、俺は自宅のパソコンからメールを送ってみた。 「誰にパソコンでメールを送ってるの?あ、おとうさんかぁ」  ん?なんだ今の…… 何か恵美に違和感を覚えた。いや、違和感どころの騒ぎじゃねーんだった。  でもだ、50億だろ?これって何か買ってもらえるチャンスじゃん。まぁ、ないか。ウチの親父のことだ、絶対貯金だわ。でもまぁ、金に余裕が出来るのはいいよな。心配しなくていいし。  テレビにはまだ親父が映っている。あーあ、まだ親父の奴もみくちゃにされてるよ。お、車に乗った。あれタクシーじゃないな。 ハイヤーかな。金持ちは違うねー。早く帰ってきてくれねーかな。報道陣が邪魔だなー。車が出れないじゃん。どいてやれよ。お、出た出た。  次の瞬間、親父が乗った車に横からトラックが突っ込んだ。群がる報道陣。 「アタル!!!」 「なんだよそれ。は、はやく救急車呼べよ。おい!」  恵美の肩が震えてる。 「だ、大丈夫だ。あのハイヤー頑丈そうだったし……」  テレビは映像を切り替えた。どうなってるんだよ。連絡もとれねーし。
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