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ロッカールーム
「前列契約をしたいんだけど」と云われたシュシュは とても喜んでいた
でも・残念だけれど ボクは認める訳にはいかなかった
シュシュはシュシュであるなら ボクといるべきだろう けれど
ボクはボクだから シュシュといたいのだけれど 一緒にいられなくなる
「とにかく 契約は無理だ」 ボクは ボクが選びたくない方向を決める
『でも がんばってきた成果です・やってみたいです シュシュとしては』
「〔谷保娘小町〕だって・まだ 認めたつもりはない」
ボクは珈琲を淹れる/ 何かをしていないと落ち着かない
『シュシュは あれだけ練習してきたんです・きちんと評価してください』
「ボク達のコトに巻き込んだままで・続けてかまわないことなんだろうか」
ボクがそう言うと シュシュは黙ってしまった/ 声を押し殺しているようだ
それでも・とボクは思う
この辺りで引き返さないと 戻れなくなる/ ごめん シュシュ
ボクは珈琲を飲み干した
谷保天広告社が入っているビルに向かう
ビルの2階に上がる階段下の倉庫 が改築されていて・狭いけれど〔谷保娘小町〕のロッカールームになっている/ 合鍵はシュシュのカバンから持ってきた
スマホのライトを明かりにして ロッカールームの扉を開ける
右側のラックに〔パールホワイト〕の衣装が掛けてある 正面の棚には〔パールホワイト〕のショートのウイッグと眼鏡が名前付の透明ケースに入っている
シュシュ達が〔谷保娘小町〕として 一生懸命に頑張ってきた証しだ
〔パールホワイト〕の衣装やウィックが ライトでより光って見える
でも・ボクがしなければいけないことは
ボクは 家から持ってきたナイフを手にして・ゆっくりとそれを振り上げた
「誰かいるの ?」
後ろから声がかかる/ 全身がぴくりと止まる
振り返ると・瑛美さんが びっくりした顔で立っていた
ボクは瑛美さんを突き飛ばして ロッカールームを後にした
ボクが戻る先は やはりシュシュとのアパートしか無かった
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