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「んじゃ、質問。咲羅からは俺のことなんて聞いてる?」
「え、と……次代冥府の官吏で、初代の魂が体の中に入れられていて、二重人格みたいになってる、って……じゃあ俺らっていうのは、貴方と……」
「そうだよ、俺と翠―――初代冥官の男がね、君に興味を持った。面白そうだからね」
それは、至極恐縮であるべきなのか、喜ぶべきことなのかはわからない。
だが、碧哉がそんなにたくさんの事柄に興味を持つような性格にも見受けられないし、言葉を偽っているようにも思えない。
あくまで直感的なものの話ではあるが。
いい人であると、思いたいと思っている紅がいた。
「ちなみにこれがあいつに体を貸す条件なんだけどね。お嬢はあいつ苦手だから逃げちゃうんだよ、まあせっかくだから」
碧哉は絶対に、自身の中に在るのであろう男の存在を、初代冥府の官吏の名を口にしないのは、彼の意図があってのことだろう。
だから紅は、それに関しては黙示を続けた。
その間に碧哉が、机の上に置いていた、銀色の金属で縁取られた飾り気のない眼鏡を手に取ると、掛ける。
―――だが、特に変わった様子はない。
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