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「勘違いをするなよ、丹槻。あれも言っていたとおり、俺たちはお前をとって食おうなぞ思ってはいない。あくまで俺たちは、お前に興味がある―――それ以上でもそれ以下でもない。それだけだ」
次代冥官の体を使い顕現した初代冥官が、大きくため息をつく。先ほどの、どちらかといえば可愛らしい印象を受けた双眸の端はつり上がっており、睨まれるだけで萎縮してしまいかねない。
碧哉に比べ、こちらは鋭さが際立っていた。
次代以上の凄み。
次代以上の余裕。
次代以上の―――恐ろしさ。
紅はたった今、その身で全てを受けている。
この人は、強いのだというのが。
嫌でも理解出来た。
「貴方が……初代」
「ああ、俺が初代冥府の官吏にして、冥府の犬たる讐氏の直系八代目、讐翠鳴という、よしなにな、小僧」
言葉による返事はない。
目の前の男の、男でありながらの美しさに言葉を失い、紅は何度も頷くしかできなかった。
あまりの初々しさに翠鳴は笑みを漏らし、椅子の背もたれに肘を預けたまま首から上だけを俯かせ、嗤う。
本当に、久方ぶりに見た。
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