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わずかにがやつく店内は、見るからに普通とは違う色彩を持った人間―――霊術師たちが各々憩いの時間を過ごしている。
「やあ、いらっしゃい。薫ちゃんなら、あそこだよ」
その中でも異色中の異色である、たまたま入口近くで配膳をしていたらしい喫茶店シュピラーレの店主である宮里潛が顔を上げ、ある方向を指さした。
その先には嫌でも引き付けられる、美しく長い黒の髪―――と、その対面に座る見慣れない色彩の青年が座っていた。
少なからず同じ席に座っている、ということは知り合いなのだろうが、紅は全く見覚えがない。
そして何よりも。
見ただけでわかった。
あの人は、薫と同じくらいに強い力を持った実力者であることくらい。
体の全身が悲鳴をあげる。本能が警鐘を告げている。
簡単に―――見れば、簡単にわかった。
「あれは……?」
紅が思わず眉を顰めれば、潛は彼の表情ににじみ出ていた不安を読み取り、くすくすと笑みを漏らす。
―――実際、あの碧色の少年に何の実害もない。くわえて、彼の中で生きている〝あの男〟も基本的には、実害はない。
それは間違いなく、事実ではある。
普段の〝彼ら〟であるならば。
初代も次代も。
怒らせさえすれば。
「大丈夫だよ」
何もないのだから。
「そう、ですか……」
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