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〝冬桜の色素はそんなに強くないよね〟
〝そう、だから気になったのー!〟
そこまでを思い出して、紅はうつ伏せに肘をついたいた状態から仰向けへと変わり、既に半年近くも目にしていたがために見慣れた天井の木目を見つめる。
冬に咲く、桜。実際に冬桜、寒桜と呼ばれる種類の桜は存在しているが、それらの種類は女子学生が話していたとおり、色素が薄く、見えても白か薄い桃色程度であって鮮やかなものではない。
イギリスのとある文学にちなんで色でも塗ったのか、それともなにか別のものを指して桜と呼んでいるのかは分からないが、少なからず寒桜とは違うながらに冬に咲く、色鮮やかな桜が存在しているのだという。
もしそんなものがあるなるば、見てみたい。
〝桜〟の名を冠する―――あの子と共に、と。そんなふとした衝動から土御門学園の外を飛び出し旅行雑誌を買い漁り、行きつけの喫茶店で先輩である陰陽師たちの情報を搾取した上で必死にそれらしい記事を探しているのだが、やはりそんな話は見受けられない。
あるのは大体メジャーな冬桜の特集か、それこそ冬にちなんだレジャー施設の記事ばかりで、いっそちまりちまりと稼いだ小遣いをこれらで使うべきか、と悩むほどには本当に見つからない。
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