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それを見てへらへらと笑う姿にくわえ、纏っているシャツとズボン、襟元を締めているネクタイは紛れもなく学生服であり、仕草や服装が相まって十代半ばの、年相応の風貌をしている。
これだけであれば、恐らく紅もさして警戒をすることもなく席へ向かっていただろう。
しかしそれら全てを覆すのは、女性的な大きな瞳と、肩まで届かない程度に切られた癖のない髪を彩る―――碧色。
そして何よりも目を引くのは、額から左頬に掛けて走る、縦一文字の傷だった。
異能力の制御と実力向上を学ぶ土御門学園に入った後だからこそ、そして刀という得物を振るい、使いこなすようになるために刀同士の打ち合いをするようになったからこそ、分かる。
この傷は紛れもない、刀傷であることが。
実際紅の腕にも、咲羅の刀神である虎太郎から受けた同じような傷があり、咲羅から手当は受けていたものの、傷はしっかりと残ってしまった。
皮膚の上に出来た傷であれば跡は残らず、その下にある真皮にまで達してしまった傷から、体に残ってしまう。
くわえて、目の前の青年の顔の傷は紅の腕に残っている傷よりも深く、皮膚の下の組織までしっかり抉られたような、そんな傷口だということが一目で分かる。
「座れ、丹槻。見苦しい」
「は、はい」
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