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―――関わりたくない、という意志が露骨に紅にも伝わってきていた上、態度からもすぐにわかった。
そこからぎこちなく青年に視線を移せば、屈託のない笑顔が紅を歓迎し、抵抗する気が失せてしまい、がっくりと俯く。
「じゃあ……それで、いいです……」
嬉しそうに頷き、青年は体を起こせば、椅子の背もたれに肘を乗せると、足を組んだ。
その仕草はどこか流麗で、風情がある。―――というよりも育ちがいいのだろう、粗暴でだらしのない行動をとったとしても、雑な所作が一つもない、と言った方が正しいだろう。
「えへへ、ありがとう。じゃあ自己紹介しようかな。俺は翡翠碧哉、〝不可逆輪廻〟なんて大層な名前をもらった上で、次代冥府の官吏を努めさせてもらってるよ。―――まあ、まだ新米だから未熟者だけどね」
「丹槻、紅です。よろしくお願いします」
差し出された碧哉の手のひらを軽く握り、振る。こんな単純な行為だけで碧色の青年は嬉しそうに笑い、うんうんと大きく頷く。
だが、細められたその瞳の奥に、大きな深淵のような感情があることを―――紅は見逃さない。
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