騒音リモコン

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 見知らぬ土地で友人も恋人もいなかった。楽しみといえば、週末のパチンコだった。僕は別にギャンブル狂いというわけではない。パチンコの遊び方すらよく分からなかった。  ただ店に目当ての女性スタッフがいたのだった。 僕は景品カウンターが見える位置に席を取り、そこから店員のミナガワさんを見た。あどけない顔立ち、裏表のなさそうなその笑顔。何時間見ても飽きなかった。声をかけることはできない。ただ見ている、それだけで満足だった。  ある日の夜、パチンコ店から家に帰ると、室内は外以上に寒かった。入居から半年以上、すでに部屋の中は荒れ放題だった。テレビのリモコンやレコーダーのリモコンはすぐに見つかったが、エアコンのリモコンは見つからなかった。  白い長方形の物体……と思って手に取ると、それは照明のリモコンだった。こたつ用の掛布団を蹴り飛ばすと、二つのリモコンが飛び出した。僕は即座にエアコン用のリモコンを手に取り、スイッチを入れた。ゴォォォという古びた振動音と共に、温風が部屋中を包み込んでいく。  もう一つの白いリモコンは見慣れないものだった。手のひらに収まる程のサイズで、長方形の形をしており、ボタンはプラスとマイナスしかなかった。 『こんなリモコン、持ってなかったよな……』 僕はリモコンの裏に書かれてある注意書きを見た。
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