2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
僕は慌てて家に戻り、右側の壁に耳をつけて、聞き耳を立てた。
「シャワー借りてもいいでしょ?」
「いいよ」
右壁から微かに聞こえるその声を聞いて、目の前が真っ暗になった。
パソコンの画面には、裸で絡み合い、喘ぎ声をあげる、ミナガワさん似の女優が映っている。僕はうんざりした。もう聞きたくないと思い、騒音用リモコンで、パソコン上の女優の声を完全に消し去った。
僕にできることは、これ以上の現実を聞かないように、逃避することだった。騒音用リモコンで、自分の家の暖房の音を最大にした。排水管の水が流れる音や換気扇が回る音、部屋中のありとあらゆる騒音の音量を上げた。普段は聞きたくもない騒音がこういうときに、役に立つとは思わなかった。僕は毛布と騒音に包まれながら、涙を流して眠った。
最初のコメントを投稿しよう!