狐火

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「朱先輩、ついてきてくださいよう~」  朱は彼から先輩と呼ばれているが、何の先輩なのか、本人が判っているのかいささか怪しい。 ほんのちょっとだけ、仕方ないか、と思ったのを彼は見逃さなかった。 まだ煙の立つ煙草を朱からもぎ取ると、濡れたシンクに押し付け、それから紫煙の煙る朱の袖を引き、半ば抱えるように瞬く間に境内まで引っ張り出してしまった。 相変わらず、朱の事を怖がってるのかナメているのか分からない。 「霧彦、一度確認したいのだけど、君が先輩と呼ぶこの私は一体、何なのかな?」 和装コスプレのニートだとでも思っているのではないか。 そもそも、これらの言葉を朱にもたらしたのも霧彦である。 「え、神社(ここ)の神使じゃないですか」 模範解答。 「じゃ、君は?」 うーんと唸ってから、いつものキラキラした目で言った。 「朱先輩の舎弟です!!」 舎弟の意味が分かっているのだろうか。 上空では、裏山の烏たちが頻りと騒いでいる。 単衣の裾が汗ばんだ足に絡みつく。 うっかり連れ出されてしまった自分に舌打ちする。
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