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細い首筋からのぞいた半襟の赤が、唇の赤によく映えていた。
「若い子ぉらが挨拶に来てくれたみたいやけど、なんや騒がしゅうてね」
赤い唇をしゅっと上げて綺麗に笑うと、乳歯のような青白い歯が覗いた。
簪に目が眩んで、烏たちが暴挙に及んだのかと思ったが、少女は涼しい顔をしている。
どちらかといえば烏たちのほうが暴漢にでも合ったような有様だ。
うずくまったままの烏たちは、じりじりと朱のそばへ移動する……というか、朱の背後に隠れようと後ずさりながら我先にと飛んで戻って来た。
どうやら彼女を恐れての事らしいが、状況が読めない。
「お嬢さんに失礼でも?」
霧彦…というか朱の足元にへばりついた烏に目をやると、ぷるぷると嘴を振った。
どうやら彼にもさっぱりの様だ。
『オレのは完全にとばっちりですよう』
雛鳥のように羽を小さく震わせて見せた。
情けない。
「挨拶もせんと、すんまへん。兄さんらには悪いことしたな。」
少女の一瞥に、背後の烏たちが震え上がる。
「下のお堂に越して来まして、主のお使いですわ。」
どこかで聞いた事のある、棘のある西の言葉……その口振りに引っかかりを覚えたけれど、気のせいかもしれない。
「大きい兄さんも、おつむが留守になってますぇ」
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