4 - Get a freedom (1)

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 「お喋りしてる時間はない。お前も邪魔するようなら容赦しない」  最初から容赦する気がないのか、トリガーに指をかける。それに物怖じすることなく、レルファはナハトを説得しようと試みる。  「こんな場所でも、私は貴方を信用していたわ…。でもそう言うなら仕方ないわ。組織の一人として貴方を食い止めるまでよ」  悲哀の混ざる眼差しをナハトに向け、レルファは左右の手に三本ずつ、計六本のナイフを構えた。その意味を理解したナハトは構えていたデザートイーグルをおろし、レルファの持つナイフとは型の異なるナイフに持ち替えた。  「ただの時間稼ぎにはもったいないが仕方ない…。その信用に応えて、こいつで楽に逝かせてやる」  刹那、レルファは体を沈ませ背後のドアを蹴り、ナハトめがけて突進した。見切り余裕の様子でそれをかわしたナハトは、大きく跳躍してレルファの背後をとる。すかさずナイフを後ろに振るが、綺麗なバック転を描いて一歩後退し逃れる。間をおかず投げたナイフはあっさり叩き落されてしまった。  「隙だらけだな。それでもリレイ屈指の殺し屋か?」  相手に大きな動きを見せられるほど、ナハトには余裕があるということである。実力の差を見せつけられたレルファは、軽く歯軋りをした。  「自分の実力は把握してるつもりよ。貴方に敵わないこともね」  そう吐き捨てると、自棄的にナイフを投げた。ナハトに届く前に床に落ちたナイフは甲高い金属音を発し、燃え盛る炎の音に掻き消えた。  「諦めるなら行かせてもらう」  ドアに向かうべくレルファの隣を通ろうとした刹那、ナハトの視界が黒く焦げ付いた天井を仰いだ。瞬時に体が倒れたと認識したと同時に、人間の体の重みを感じる。  「甘く見ないで。不意打ちは常套手段とよく言うでしょ?」  上からレルファの声が降ってきた。声が耳に届くよりわずかに早く、生暖かく柔らかい生きた人間の手の感触が首に触る。  触れた手が殺意を帯び、握力となってナハトの首に食い込む。その手を止めるには、手を動かすタイミングが遅すぎた。  急速に喉が絞めつけられ、骨の軋みが痛みとなって悲鳴を上げだす。  「…え?」  二人が聞き慣れた不快な音と共に、レルファの殺意はそこで止まった。
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