1 - Discovery

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 「昨日、殺し屋に会ったんだ」  物言わぬ木の十字架に向かって、龍輝は語りかけた。太い木の枝を十字に縛りつけ、緩やかに盛り上がった土の上にさして墓標としている。その土の下には、彼に後悔という感情を齎す一人の人間が眠っている。  「蒼い目をした、暗い眼差しだった。お前に似た目だったが、そこに憎悪があるのかまでは分からない」  答えるように木々がさわさわ音をたて、光が揺れる。ひだまりの中を鳥がじゃれて葉を弄ぶ。その音に共鳴するかの如く、鍾乳洞がその闇の奥から冷たい風を龍輝へ送り込む。  「はっきり言って僕にはよく分からなかった…。お前と同じような目をしているのに、そこに喜怒哀楽のどの心もないんだ。まるで人形と会話しているみたいで、けれど思考は存在する」  風が刹那止み、木々は龍輝の言葉を黙って聞いている。  「あの殺し屋を何とかしてやりたいと思うのは…おかしいか?」  木々はざわめく。土の下に眠っている者が「それはお前の自由だ」と言っているかのように。龍輝は目を細めてほんの一瞬だけ笑ってみせた。  「そう言われたら、僕はお前を殺した事をまた後悔する事になるな…」  哀しむような憂うような目で龍輝は笑った。今にも泣き出しそうなその顔は、少なくとも三年前の彼にはないものだった。  「じゃあな、蒼鵞」  立ち上がった龍輝は、冷たい風に誘われて鍾乳洞へと消えた。  「またその殺し屋に会えたら、今度はそいつを連れてここへ来る」
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