4 - Get a freedom (1)

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4 - Get a freedom (1)

 冬の路地裏で静寂を破る音が響く。  組織の建物に隣接する廃ビルの屋上に、ガラスの破片が飛散する。その破片の上に龍輝は着地した。一瞬だけ背後を見、未練もない様子で躊躇いなくビルの階段を下り始めた。  程なくして本部の方から爆発音が耳を打つ。それでもペースを変えずに階段を下り終わり、本部前の道路へ出た。  組織内の武器庫を爆破されたにも関わらず、外から見た建物は異様に静かだった。先の爆発音に戸惑う者はいない。アクシデントが発生した時のために訓練を施されているからだろう。外を見回っていた組織の一人が龍輝を見つけると、躊躇わず歩み寄り話し掛けてきた。  「美龍!さっき本部に帰ってきたんじゃなかったのか?」  「ああ…ちょっと用事があってまた外に出かけてたんだ」  「用事…?」  不審な顔をしたのもつかの間、龍輝に声をかけた男は、自分の額にナイフが突き刺さったと気付くのに一瞬遅かった。勢いよく血が噴出し、バランスを失った人形のようにくずおれた。  その様子を見た周囲のメンバーは瞬時に各々の武器を手にし、赤い血溜まりの中心に立つ龍輝に殺意の牙を向ける。  「美龍、組織への裏切りとみなして抹殺する!」  周囲は龍輝への殺気で溢れかえる。しかし龍輝はそれをものともせず、それどころか楽しそうに笑いながら迎え撃つ。  さながら悪魔のように駆け抜け、外にまで火の気が上がり始めた本部へ走り出した。  「ナハトを止めろ!奴は組織を潰す気だ!!」  炎と煙があがる中、誰かが叫んだ。爆発の衝撃で建物の地下は崩壊してしまい、銃火器は全て瓦礫の下敷きになった。ナハトは狩猟用ナイフと使い方の分からないワイヤーランスを服の中に仕込み、爆破前にあらかじめ確保しておいたG36と弾薬、デザートイーグルと投擲ナイフを手に、階段を駆け降りて襲い掛かる殺し屋達を躊躇いもなくなぎ倒していく。  地上へと続くドアを蹴破り、デザートイーグルを構えた正面に小さな人影が映った。  構えた姿勢を崩さぬまま目を凝らすと、小さな人影は一人の女性であることが確認できた。  「ナハト、貴方どういうつもりなの!?」  緊急の連絡を受けて戻ってきたレルファは、煙にまかれた部屋の奥で呆然と立っていた。その後ろに外に続く通路が見える。
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