5 - Get a freedom (2)

1/8
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

5 - Get a freedom (2)

 「ボスには感謝しないとなあ…?こうしてお前と殺り合えるんだからな!」  狂い笑う男は、ナハトをその目に捉えて離さない。  鬼気迫る様子で近づいてくる男をものともせず、余裕の様子で龍輝に耳打ちした。  「龍輝、篭目の足止めを頼む」  「了解」  短く合意を得ると、蜘蛛が散る如くその場を立ち退く。  それを目で追い、ユンジェンは逃がすまいと撃つ。撃たれた弾はナハトの髪を軽く掠り、空しく空に消える。  「今まで殺ってきた誰よりも殺し甲斐があるってもんだ。お前もそうだろ、ナハト!」  もはや好青年の面影はどこにもない。狂気の笑みを浮かべながら、一心にナハトを追うユンジェン。ナハトは表情を歪めただけで、その問いかけには答えなかった。  ユンジェンと篭目のコンビネーションの高さを知っていたナハトは、二人を引き離す事に重点を置いていた。  的確に撃たれる弾を紙一重でかわしながら、ユンジェンが篭目から離れるのを一歩動くごとに確認する。篭目は時折こちらを見やるが何か話し込んでいるようで、ユンジェンのいるこちら側に近づく素振りは見せていない。  「篭目と俺を引き離したところで何も変わらないぜ?」  放たれた何発目かの銃弾はナハトの首筋を掠り、同時に振られたナハトのナイフはユンジェンの眉間を浅く裂いて、二人の動きは止まった。耳に届く声は聞き取れず、龍輝と篭目は闇に紛れて確認できない程遠くに離れたのが分かる。  「…本当にそれだけだと思うなら、お前は永久に頂点に立てやしない」  眉間から伝い流れてくる血を舌で舐め取り、にやりと笑いもせずナハトを凝視するユンジェン。頂点に立てない、という言葉が挑発だと見抜けぬ程腹が立っているらしい。  「貴様あ…!」  夜叉の如く怒りを露にし、手に持つ銃をひときわ強く握ってナハトに銃口を向ける。その様子を身じろぎせず正面から見ていたナハトは、逆手に握っていたナイフを持ち直し、少しだけ体を沈めた。  「その口を永遠に黙らせてやる!!」  躊躇いなくトリガーを引いたが、その後に銃声は続かなかった。  「!?」  予想外の事態にユンジェンの怒りは揺らいだ。もう一度トリガーを引いても、銃は空回りした音だけを発する。  「くそっ」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!