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5 - Get a freedom (2)
「ボスには感謝しないとなあ…?こうしてお前と殺り合えるんだからな!」
狂い笑う男は、ナハトをその目に捉えて離さない。
鬼気迫る様子で近づいてくる男をものともせず、余裕の様子で龍輝に耳打ちした。
「龍輝、篭目の足止めを頼む」
「了解」
短く合意を得ると、蜘蛛が散る如くその場を立ち退く。
それを目で追い、ユンジェンは逃がすまいと撃つ。撃たれた弾はナハトの髪を軽く掠り、空しく空に消える。
「今まで殺ってきた誰よりも殺し甲斐があるってもんだ。お前もそうだろ、ナハト!」
もはや好青年の面影はどこにもない。狂気の笑みを浮かべながら、一心にナハトを追うユンジェン。ナハトは表情を歪めただけで、その問いかけには答えなかった。
ユンジェンと篭目のコンビネーションの高さを知っていたナハトは、二人を引き離す事に重点を置いていた。
的確に撃たれる弾を紙一重でかわしながら、ユンジェンが篭目から離れるのを一歩動くごとに確認する。篭目は時折こちらを見やるが何か話し込んでいるようで、ユンジェンのいるこちら側に近づく素振りは見せていない。
「篭目と俺を引き離したところで何も変わらないぜ?」
放たれた何発目かの銃弾はナハトの首筋を掠り、同時に振られたナハトのナイフはユンジェンの眉間を浅く裂いて、二人の動きは止まった。耳に届く声は聞き取れず、龍輝と篭目は闇に紛れて確認できない程遠くに離れたのが分かる。
「…本当にそれだけだと思うなら、お前は永久に頂点に立てやしない」
眉間から伝い流れてくる血を舌で舐め取り、にやりと笑いもせずナハトを凝視するユンジェン。頂点に立てない、という言葉が挑発だと見抜けぬ程腹が立っているらしい。
「貴様あ…!」
夜叉の如く怒りを露にし、手に持つ銃をひときわ強く握ってナハトに銃口を向ける。その様子を身じろぎせず正面から見ていたナハトは、逆手に握っていたナイフを持ち直し、少しだけ体を沈めた。
「その口を永遠に黙らせてやる!!」
躊躇いなくトリガーを引いたが、その後に銃声は続かなかった。
「!?」
予想外の事態にユンジェンの怒りは揺らいだ。もう一度トリガーを引いても、銃は空回りした音だけを発する。
「くそっ」
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