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僕たちは手を繋げばうまくいくことをしり、一人で出るための手段について話し合っていた。
「大きな決心をする何かがあればいいと思うよ。」
「何でそう思ったんだい?」
「火事場の馬鹿力みたいな感じ?何かきっかけがあればいいと思うの。」
僕は少し納得してしまった。
「なるほど。でもそういうきっかけってなかなかないよ。」
彼女は少し考え込み、にこっと笑った。
「やっぱり慣れるのが一番手っ取り早いよ。」
僕もそれにはため息をつくことしかできなかった。
気づけば外は暗くなっていた。時計を見ると、もう六時を回っていた。
「ただいま。」
買い物袋を持って入ってきた母は驚いていた。
「もうアイと仲良くなったの?この調子で外に出られるようになればいいのに。」
僕たちは顔を見合わせて苦笑いした。
「そうでもないよ。いろいろやっていただけだよ。」
そのまま母は台所にいってしまった。
何気なくテレビをつけると、僕は息を呑んだ。それはAIに関するニュースだった。
「今日の未明、政府が問題がある家庭に配布したAIを回収することを発表しました。AIは淀島研究所に集められるそうです。早ければ明日から開始する模様です…」
僕が彼女の方を見ると、どこか寂しいそうな顔で笑った。
「蓮くんと練習をするのは今日で最後か。」
僕は彼女の顔を見ることができなかった。
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