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僕は一人で起きることができた。明日から彼女がいなくなっても大丈夫なように。
「今日で最後か。アイにはいろいろ助けてもらったな。」
「私だって蓮くんからたくさんもらいましたよ。」
手を繋いで外に出る。とても月がきれいだったが、それより僕はちゃんと話しておかなければならない。
「僕はずっと一人だったんだ。手を差しのべてくれる人なんて今まで一人もいなかった。本当に感謝している。これで別れるのはとても寂しい。ずっと一緒にいたいと思った。好きだと思った。」
彼女は首を横にふる。
「私だって蓮くんのところに来る前にいたところでは人間扱いなんてしてくれなかった。私がAIだから。そこで蓮くんに会って人間扱いされて、頼ってくれて心の底から嬉しかった。ありがとう。私も蓮くんのことが好きでした。」
お互いの打ち明け話は歯痒く、これで最後でなければ楽しく暮らせた気がする。
彼女は僕の方を体全体で向いた。
「蓮くんにお願いがあるの。私のことをきれいに忘れてください。私は多分他のものに変えられるか、遠いところに飛ばされるかだと思います。」
僕は無言でうなずき、彼女は遠く見ていた。
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