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僕は彼女がいなくなる日の朝、わざと遅く起きた。別れを告げてしまうと、会えなくなってしまう気がしたから。少し遅く起きて、いつも通り用意されたパンを食べる。当たり前だったものが、当たり前じゃなくなる感覚というのはこういう感覚なのか。
僕は四日間、本を読んで過ごした。今から逃避できる手っ取り早い方法が本だったからだ。よくあるような話だ。ごく普通の主人公が仲間と協力する冒険ファンタジーだ。こうやって時間を使い、気がついたらアイのことを忘れている。これが一番いいんじゃないか。
四日目も終わりに入った六時頃、母が走って帰ってきた。
「蓮、よく聞いてね。アイちゃんは分解されることになったの。AI反対派がAIは危険だ、すべて処分する、って。政府が配布しといてって感じだけど。もう過ぎたことだから忘れなさい。また楽しくなる日が来るから。」
気づいたら僕は泣いていた。母は無言で抱きしめてくれた。僕は目標を立てた。僕は彼女といて幸せだった。だから自分の幸せを守るために彼女を連れ出すのだ。
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