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「良いニュースと悪いニュースがある。良いニュースから話そう。あのAIは恋愛感情を持っている。僕たちは彼女を人の体に入れてみることにした。」
僕はこの部分で戸惑いが隠しきれなかった。
「その…アイは人間になることが出来たんでしょうか?できたなら会わせてください。」
「成功だった。見た目もそのまんまだ。しかし…」
ふとドアの方を見ると、見たことがある顔が出てきた。
「アイ!!」
僕は彼女の近くに行こうとした。だが彼は止めた。僕に悪いニュースを伝えるために。
「待て。悪いニュースを聞いてからだ。確かに彼女を人間にすることはできた。しかし要領の関係でここ最近の記憶は消えてしまった。残念だが君の知ってるアイはいないよ。」
僕は膝から崩れ落ちた。僕の側にいてくれたアイがもういないなんて。
「大丈夫?」
アイが心配そうにこちらを見ている。だけど僕が知る彼女はいない。知らないままの方がよかったのかもしれない。
相沢は僕の肩に手を置いた。
「確かに記憶は消えてしまったのかもしれない。だが君はまた彼女と暮らせる権利を得た。まあ研究対象になるわけだが。もう一度やり直せばいい。新しい思い出を作って行けばいいじゃないか。」
僕は立ち上がり彼女を抱き寄せる。
「これからよろしくね、アイ。」
僕の目からは涙がこぼれ落ちた。止めようと必死にこらえるけどどんどん落ちていく。
何も知らない彼女はにっこりと笑う。
「よろしくお願いします。」
僕はどこかで間違えたのかもしれない。だけど前を向かなければ。昔の彼女を知る僕は悲しみを持ち、これから知る彼女に喜びを持っている。もう離さない。絶対に。愛していくんだ。
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