始まり

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 玄関の扉が開くを音が聞こえ、目が覚めてしまった。多分母だろう。僕の家に訪ねてくる人はいないから。 「おかえり。」 「ただいま。」 母の後ろで何か動いた気がした。僕がずっと後ろを向いているのが気になったのだろう。母は後ろを向き、ああと声を漏らした。 「蓮には言ってなかったね。今日からうちに家族が増えるわ。ほら入ってきて。」  母に促され出てきたのは僕と同じくらいの女の子だった。長い黒髪に白いワンピース。目は人間とは思えないほどキラキラしている。 「この子は?」 「政府が出してくれたAIよ。ほらお父さんなくなって大変じゃない?だからよ。」 「名前あるの?呼ぶとき困るしさ。」 「まだ決まってないよ。決めたかったら蓮が決めていいよ。」 僕はあまり考えずに答える。 「アイでいいよ。AIを日本語読みして。簡単で呼びやすい。」 母は満足気に頷いた。 「いいんじゃない。かわいい名前だし。ほら蓮くんにあいさつして。」 「よろしく。蓮くん。」 「こちらこそ。」 AI相手に僕は何を緊張しているんだ。こんなんじゃ先が思いやられる。少しずつ慣れていかなければ。
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