始まり

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 僕はあの日を思い出す。 「中学に入って一番最初の運動会のクラス対抗リレーでそれは起きた。もともと僕のクラスは頭がよく、運動ができる人が寄せ集まった感じだった。いつも他のクラスを見下していて、一番じゃなきゃすまなかった人間たちだった。もちろん一年生の他の競技は圧倒的な差をつけて勝っていた。僕はクラスで一番足が速く、アンカーに起用された。一位でバトンをもらい、ゴールまで50メートルもなかったと思う。変に力が入り、右足をひねってしまった。僕はそのまま転んでしまい、膝を擦りむいた。早く立って行こうとするのだが、立ち上がれない。他のクラスが追いついてきた。罵声が聞こえ、なんとか立ち上がり走ったが、結果は二位だった。僕はクラスの待機場所に戻ったが、もう僕の居場所はなかった。クラス全員が僕をいないもののように扱い、物を隠されたりもした。それぐらいならまだいい。放課後トイレでライターで肌を炙られたり、女子トイレに入れられネットで拡散されたりした。精神的に疲れてしまった。こうして僕は家に引きこもってる。」 僕が彼女の方を見ると、不機嫌そうな顔をしていた。 「運動会なんかでここまでやられなきゃいけないの?意味がわからないわ。」 「彼らいわくあんなやつらに俺たちが負けるはずがない、三年連続一つの競技も落とさず勝つつもりだったらしい。」 彼女はいいことを思いついたとでも言うように手を叩いた。 「よし、決めた。」 「何を?」 彼女は顔を少し赤くしながら言った。 「私と手を繋いで外に出るのよ。今の話から外への恐怖は自分を助けてくれる存在が近くにいなかったことだと思うの。やるだけやってみよう。」 「今日も夜中にやってみるんだろ?」 今回は彼女は満面の笑みだった。
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