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真相
私の計画は、8ヶ月前に産声をあげた。
綿密なプランを練り、あの男に復讐するために。
私と石川課長は、およそ2年前から都内の中堅店舗の営業2課で一緒に働いている。
私が勤務する銀行では、支店の営業1課は法人、つまり企業を、そして営業2課が個人の富裕層を担当している。高額預金者でも、1課が担当する企業の関係者であれば1課の管轄になるので、2課が受け持つのはほとんどが地主や個人事業主だ。
私は自分が担当する高齢の顧客のほとんどが貸金庫を利用し、そこに現金を隠していることを知っていた。
あまり周知されていないが、銀行では普通、貸金庫に現金を入れないよう利用者に呼びかけている。火災などの災害で貸金庫の中身が損なわれても、銀行はそれを補償しないからだ。
私は自分が担当する顧客の中から3人を厳選し、彼らにささやいた。
「税務署からの指導で、貸金庫の利用規則が厳しくなりました。現金を入れていると、まずいことになりそうです。一旦出して、ほとぼりが冷めるまで様子を見るために、短い定期預金にしませんか?」
金持ちは一様に、税務署という言葉に過剰反応する。私はその弱点をつき、甘い誘いをかけた。
「これまでにお預かりしている預金とは別枠で管理して、総資産として加算されないかたちにできますよ」
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