彼こそ

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「おい、周りが迷惑しているのがわからないのか」 そんな中、例外的に声を上げる男が居た。 「あ!シンじゃん!」 「また風紀かよ、うぜぇな」 食堂内通路に仁王立ちで佇む、梓川深弥、風紀委員長。 高めの身長に黒々とした髪は短めで、眉間には深く皺が刻まれていて、それなりに男前である。 「何度も言うが、苗字で呼んでくれ」 「だって深弥だと真也と被るじゃん!」 「「おっそろーい!」」 「そんな庶民もどきと一緒にすんな!」 唸るように声を上げ、鋭く睨み付ける生徒会長の名前が春宮真也なので、漢字違いの同じ名を持っている。 しかし春宮は家柄で言えば学内一なのに対して、梓川の家柄はどちらかと言うと低い。 純粋にその真面目さ、腕っ節の強さと頭の回りの速さを買われての就任だった。 動じぬ冷静さが際立ち、二人が並べば春宮が動に対して静の雰囲気を持つように見える、正に両極端。 また春宮が茶色に染めた少し長めの髪を持ち、表情豊かな軟派さがあるなか、硬派な見た目もある意味正反対だ。 「騒ぐなら別の場所に行け」 「うるせぇ!一々指図するな!」 「だったら言われないような行動を取れ!」 あまりにも正反対が故か、風紀だからかそれとも只々相容れぬのか春宮は兎に角、梓川を嫌って居た。 喧嘩腰で向かう春宮と、梓川が視線を合わせたことでピリッとした緊張感が漂う。
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