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「宮紅緑だけど……」
何故聞いたと言わんばかりだが、それでもちゃんと名乗ってくれた相手には感謝しかない。
「お前の視界に入る為にはどうしたらいい?」
自分はこの人物を愛する為に生まれてきたんだ。なんて周りが聞けば笑うだろう事を真剣に思った。
だから乞うた。
「今の俺はお前の視界に入る価値はないだろう、だが俺はお前の目に入りたい」
自身が褒められた人間ではない事は自覚している。
そんな事実も特に気にはしていなかったが、今では後悔しかない。
目の前の相手と自分ではどう足掻いても釣り合わない。
一つ一つが育ちの良さを感じる所作、纏う雰囲気、なにもかもが高嶺の花だと物語る。
こんな自分では、到底その目には映らないだろう。
だが諦めるつもりはない。
努力でなんとかなるとは限らないが、それでもできる事は全てする気だ。
「えっと……つまりどういう??」
想いを伝えたつもりだったが相手には伝わらなかったようで、思わず目を丸くした。
「?わからないか?一目惚れだ」
「はぁ!?」
率直に言えば、相手の困惑はさらに深まったらしい。
次いで赤まる顔に、猛烈な愛おしさを感じた。
「一目見て隣に立ちたいと思った、だがお前は外も内も綺麗だ。今の俺では到底釣り合わないだろう」
「や、え??俺を知ってる??」
「さっき初めて知った」
少しばかり落ち込んだ様子に、これだけ綺麗なら有名だろうに、惜しい事をしたと言う気持ちと同時に申し訳無く思ったが、相手は特に気にしていた訳ではないらしい。
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