彼の人、正真

恋は人を変える話。

「外見は確かに割と自信はあるけど、その、中身はわからなくない？？」
「それくらい見ればわかる」

当然の疑問だろうが、これには自信があると胸を張る。

一目惚れと言えば外見ばかりに目が行っているようだが、その上で滲み出る雰囲気や今までの対応や表情全てが好ましく尊いと感じたのだ。

顔だけの人間にこんなに惚れ込む事はない。
己の本能が逃すなと言っている。

「今の俺はとても褒められた人間ではないことはわかる、だがこれから釣り合うようになってみせる」

何より、こんな俺の話を真摯に聞いてくれている出来た人間だ。
俺ならば多分相手の話なぞ聞かず蹴り倒すなりしているに違いない。

「だから……その時は少しでいい、俺を見てくれないか」

相手が困惑しているとわかっているのに、願ってしまう。
澄んだ綺麗な瞳を見つめて言うのは少々恥ずかしい。

暫しの沈黙。
それが、きちんと考えてくれていると教えてくれた。

「……想いを返せるかはわからないけど、その時はちゃんと向き合うよ」
「ああ！」

困ったように、でも少し照れ臭そうに微笑まれたそれが、拒絶ではなかった事が嬉しくたまらない。

「じゃあとりあえず……まずは友達からで」
「いや、それは駄目だ」
「は？」

大変嬉しい提案であったし、本当なら飛びつきたい所だが今の自分なんかが、友達だなんて立場を与えられる価値はない。
とりあえず普段の素行を正し、並べるような男になるべく努力をしよう。

なんだこいつ、と言う視線が少々辛いが今はその目に入るだけで喜ばしい。

それは変わり始めた日。