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「そんな冗談言うなよ!」
「冗談?俺があいつを愛しているのは、俺に近しい者や家族なら知っている事実だ」
自身の恋人の存在を冗談だと言われた事が相当に不快だったのか、更に荒々しくなる梓川は周囲を見渡して、とある人物を見つけると、そうだろ?と声をかけた。
よもや恋人か?と全員が同じ場所に視線を向けた先に居たのは、一般生徒に混ざり我関せずにマイペースに食事を取っていた風紀副委員長の花田。
近くの生徒がいつの間にか居た事に驚きの声を上げる中、名指しされた当人は普段は真面目でハキハキとした性格なのに、心底面倒そうに口を開いた。
「そーですねー、委員長はあの方の事に関しては、こいつ頭おかしいんじゃね?って僕ら委員がドン引くくらい愛しちゃってますもんねー」
カレーを掬っていたスプーンを口に咥えながらの遠い目に嘘を吐いている様子はない。
と言うか嘘の方が良いのではと思わんばかりの心労を崩れた口調に感じる。
「あいつと出会った上では他に興味が持てはしないな」
「あ、いつもの惚気はいいんで」
近くにいた風紀委員も何人か神妙に頷いている。
いつも惚気を聞かされてるのか、風紀委員。
胸を張り、この上なく大切で愛しているとその全てでもって表現する姿はなんとも男らしさを感じたし、家族も知るそれは真剣そのものの付き合いで、その場にいた無関係者ですら羨ましがったり、幸せを祝いたくなる物だった。
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