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深く溜息を吐く。
訳がわからないと言わんばかりにキョトンとされたが可愛くはないのでやめて頂きたい。
頭が悪い訳ではないのに、何故この男はこう言った事に対してはこうも察しが悪いのか。
「貴方、相手の立場になったことあります?好きだと言われて、自分も好きで、でも立場や実力が劣っているから付き合えないと言われてしまう」
もしも自分なら、と考えてしまう。
自分が劣っているなら努力すれば良い、しかしそうでないならどうしろと言うのだ。
「それって結構……しんどいですよ」
結局、全部梓川次第なのだ。
相手のことをなんて、梓川の惚気程度でしか知らないし、梓川の努力だって身近で見てきたし無駄だなんて言う気は無い、だが余りにも頑ななそれは相手を無視して傷つけて尚大事にするべき物なのか甚だ疑問だ。
これでわからないならもう自分は知らない。
相手に愛想でも尽かされてしまえ、と思っていたが考えた事もなかったと息を飲む様子を見れば心配はいらないだろう。
「……すまない、席を外す」
「はいどうぞどうぞ、安心してください。書類は山積みにして置いてあげますので」
相手の気持ちを考えて居ても立っても居られなくなったのだろう、素直な男だ。
早々と室内から出て行く姿を眺めていると、ふと立ち止まって振り向いた顔と目があった。
「花田」
「はい?」
「お前が副で助かった。いつもありがとう」
まさかそんな事を言われるだなんて思っても見なかった。
思わず間抜け顔を晒してしまったが、
次の瞬間には思わず笑ってしまった。
「どういたしまして」
結局、反発心さえあった自分にとっても、委員長はもう梓川でしかあり得ないのだ。
しっかりしていて貰わなければ困るし、それを助けるのは副委員長である自分の役目だ。
自分達の自慢の委員長なんだから、いつだって胸を張っていて欲しいと言うのはきっと我儘なんかじゃない。
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