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「それにしても、どうして今まで会わなかったんですか?」
私がこの会社へ入ってから一度も会っていない。
「ああ…」
さっきまでの勢いが嘘のように歯切れの悪い返事をするお姉さん。
すると、
「喜奈さんさぁ、年甲斐もなく高いヒール履いてちょっとした段差で転んで両足骨折してずっと入院してたんだよ。いい年してーーーえっと、ほんと復帰して良かった、良かった。あっ、なんだろ、嫁からメール来てるわ。下の子、今朝、熱あったからなぁ。悪い、ちょっと電話してくるわ。」
一方的に言うと市川さんはスマホ片手に外へ出ていってしまった。
飛びきり重い空気を残して…
「えっと、骨折して…その…りょ、両足とか、えーっと、大変ですよね?」
何か話さなければと勇気を振り絞って言ったのに…
「両足骨折してんだから当たり前でしょ?言わなきゃわかんない?トイレの時とかーーー」
「喜奈、やめとけって。こいつの顔見ろよ。」
私、どんな顔してる?
うん、蛇に睨まれた蛙。
もしくは、猫とネズミ。
あるいはマングースと…
って違うってば!
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