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そして、その日の夜…
「凄い偶然よね。まさか仁くんの彼女のスマホを私が拾うなんて。」
「はぁ…ですよね。」
しか、言えない。
て言うか、仁さん何か喋ってよ!
チラリと隣に座る仁さんを見てもいつも以上に不貞腐れた顔してそっぽを向いている。
で、私の目の前に座り悪魔顔の仁さんとは真逆の天使の様な笑顔を向けてくるのは…
「えっと…拾って頂いて本当に助かりました。」
私のスマホを拾ってくれたのは関目菜乃花さん。
なんと仁さんの元カノだった。なんたる偶然。
その菜乃花さんからスマホを受け取る為に仕事を終えた私達は菜乃花さんが指定したカフェへとやって来ていた。
賑やかな通りから一本裏に入ったところにあるとても落ち着いた雰囲気のカフェだ。
「そんな気にしないで。私はただスマホを拾っただけだもの。それより…あの時、女子高生が痴漢に合ってた時、一緒に助けなくてごめんなさい。気になりながらも怖くて動けなかった。」
と華奢な体で伏し目がちに話す姿を見ると女の私でも庇いたくなる。
そう仁さんの元カノである菜乃花さんは一言で言えば清楚なお嬢様系。
自然な栗色した髪は毛先をくるんとカールさせてあり先程から話している最中に動く度、ゆらゆらと揺れる様がいかにも女子らしい。
教育実習生のような地味なスーツに黒髪ストレート、いつも後ろに一つ結びの可愛げ度0%の私とはえらい違いだ。
「とんでもないです。私、結構、タフなんですよ。それに、よく、住んでるマンションのエレベーターが動かなくて階段で5階からかけ降りたりして鍛えてるからかなぁ。あはは…」
テンパってつい自虐る私の隣から仁さんの冷ややかな視線が突き刺さる。
んもぉ…
そもそも仁さんが彼女だなんて私を紹介するから微妙になってんじゃないのよ!
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