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にしても、あのもっさい学生が社長とは。
「驚いたろ?」
と、呆然とする私に市川さんが声を掛けてくれる。
「はい、驚いたも何も……私、クビになりますか?」
「ハッハッハ、それは無いと思うよ。今、ほんとうちの会社人手足りなくてさぁ、猫の手状態だよ…って誰でも良いって訳じゃ無いからね。」
慌てて付け足してくれたけど、ぶっちゃけ誰でも良かったのかな。
「市川さん、社長って今、お幾つなんですか?格好もラフな感じだし、随分とお若く見えるからそれでつい……」
言いながら、見た目で判断するなって言葉が頭を過る。
「確かにあの見た目じゃ仕方ないか。うちの社長、ああ見えて俺より一個下の29。」
「えっ、29ですか?」
この場合、社長の年齢に驚くべきか実は市川さんが30だったって事実に驚くべきなのか。
「す、凄くお若く見えるんですね…。」
「ああ、僕?ーーーじゃないよね。」
私の冷めた視線を感じて頂けたようで何よりに思う。
「あいつさぁ、童顔なんだよ、昔っから。」
「昔から?社長とはそんなに前からのお付き合いなんですか?」
「うん、大学の後輩ね。あいつ、二十歳過ぎてもコンビニとかで年確ばっかされてたわ。」
「年確?」
「ああ、年齢確認ね。コンビニで煙草買う時、毎回な。うんざりしてたよ。ブスッとした顔でコンビニの店員睨みつけてた。」
うわぁ…なんか、想像つくかも。
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