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連れてこられた場所はバックヤードにある事務スペースでその一角に決して広いとは言えないけど応接室があった。
「どうぞ。」
とこれまたぽーっと社長に見惚れながら、お茶を出してくれる事務の女性社員。
「恐れ入ります。」
いくら隣で黙ってろと言われてもこれくらいの事は社会人として言うべきだ。
でも、お茶を出してくれた彼女に私の言葉なんて耳に入っていないようだけど。
「すいません、クリアランス前でバタバタしてまして……」
いかにもな接客用スマイルを貼り付けた目の前の担当者が言う。
彼は文具書籍フロア担当の係長だ。
「いえ、こちらこそお忙しい所、お時間作って頂きまして。」
へぇ…
私にはあんなにも毒舌な癖にちゃんとビジネス会話できるじゃない。
って当たり前か、社長だもんね。
「時間も無い事ですし、早速ですが……今回大人向けの玩具という事でーーー」
えっ……
今、なんて…?
大人向けのーーー玩具って?
それ以降の会話が頭に入ってこない…
私もしかしてやばい会社に入った?
どうしよう…
「ーーーーーです。それで是非、一度、実際に試していただきたいのですが、今後のことも踏まえて、一人うちの方から連れてきましたので必要であればどんなことでも手伝わせますがーーー」
漸く入ってきた社長の言葉に我が耳を疑う。
はっ?
大人向けの玩具?
試す?
そ、そ、そ、それって……
しかも私に手伝えと?
無理無理無理無理っ!
何考えてんのよっ!
話はどんどん進んでいるけれどそんなどころじゃない!断らなきゃ!
「社長、私、そんな事、無理ですっ!大人の玩具を試すだなんて。そんないかがわしい事、私には出来ませんっ!」
私の声に社長と担当者、ううん。
事務所内にいた全ての人の視線が集まる。
私、なんか不味いこと言った…よね?
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