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「チッ…」
目の前に座る担当者にはきっと聞こえていないと思うけど、隣に並んで座る私には社長の小さな舌打ちがハッキリと聞こえた。
「あっ、えっと、私…」
「ハッハッハッ………いやぁ、実に楽しい方ですね。」
「全く、お恥ずかしい限りで申し訳ないです。実は今日が初出勤でして勉強不足で言い訳にもなりません。」
社長が目の前の担当者に深々と頭を下げたので私も慌てて下げる。
「いやいや、気になさらないで。そうですか、今日からかぁ。さぞや緊張しておられるのでしょう。大丈夫ですよ。あなたのお陰で場が和みましたから。」
と、担当者である五嶋係長が言った。
「実はこちらの窓口として彼女をと考えておりましたので今日、同席させたのですが……また改めるとします。」
「いやいや、そんな気になさらないで。却ってこれを機に打ち解ける事が出来て仕事がしやすくなりますよ。」
もう岩のように固まったままの私を置いてけぼりに二人の会話は続く。
「そう言って頂けると…」
と、社長が私の方を見るので「?」って顔を返すと
ーーーーな、んか言、え、
と口パクで言われた。
もちろん、五嶋係長からは見えないように。
そ、そっか、ちゃんと謝ってお詫びしなきゃ。
「先程は大変失礼致しました。至らない所も多々あるかと思いますが今後ともどうぞ宜しくお願いします。」
目の前にあるテーブルに額がくっつくくらい頭を下げた。
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