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どこでもいいから早く新しい職場決めたかったから…とは言えない。
目の前の社長は溜息をつくと
「ったく…胡桃沢、胡桃沢仁。もう社長って呼ぶなよ。」
「うっ、いったぁ。」
私のおでこに思い切りデコピンをした。
そして今度こそさっさと歩いて行ってしまった。あっという間に人混みにまざり姿が見えなくなる。
いけない、置いてかれる。
「ま、待ってくださいっ!社、ちょ、じゃなくて…えっと、じ、仁さんっ、待ってってば!」
大きな声で呼び止めると人を掻き分け進んでいくその先で…社長こと仁さんは待っていた。そして、
「上出来。」
満足げに笑うとまた私の頭をくしゃりと撫でた。
「さっ、帰るぞ。」
そう言った顔は既に眉間にシワが寄った仏頂面だった。
だけど…ほんのちょっとだけど分かる気がしてきた。
きっと仏頂面はこの人なりの鎧なのかもしれない。
童顔を気にするあまりこんな風になったのかも。
さっきの無防備な笑顔がそう思わせた。
そんな事を思いながら置いていかれないよう私も急いで歩き出した。
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