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「よく聞こえませんでしたが、何かおっしゃいました?」
危うくあの失態を市川さんに知られるところだけどこちらも大人しく言われっぱなしのまま引き下がるわけにはいかない。
ちゃんと楠原弥生という親から貰った大切な名前があるんだから。名前で呼んでもらわないと。
「まっ、どうでもいいけどさ。」
「ど、どうでもって、」
いちいち腹立つなぁ。ほんとに一言言わないと、って意気込んだらなにやら書類をこちらに出してくる。
「ほら、これ見たらその膨れっ面なおるんじゃねぇの?」
「膨れっ面なんてしてませんけど。」
納得いかないものの仁さんがこちらに手渡した書類を確認する。
「えっ…これって。」
書類に目を通すと私が大失態をした例のデパートの企画書だった。
「企画が通った。」
「ほ、ほんとに…?」
あんなバカみたいな失敗をしちゃったのに…
「で、予定通り窓口としてお前に来てほしいって。五嶋さんが。」
「えっ…五嶋係長が、私に?」
嘘でしょ…
「一生懸命な感じが良かったので、だと。」
「一生懸命って…よく話も聞かず一人勘違いしていたと言うのに…本当に私でよろしいのでしょうか?」
どう考えても駄目でしょ。
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