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次回の打ち合わせ日程を決め、席を立つ時に飲み終えて空になった紙コップを持ちふと気付いた。
「あっ、そう言えば…私、珈琲のお金払ってません。えっと、お財布、」
急いで鞄からお財布を出そうとしたらそれを止められた。
「珈琲代だなんて、頂けませんよ。僕が飲みたかったものでつい楠原さんにも勧めてしまいました。それに自販機の紙コップに入ったものですし。お気遣いなく。」
なんていい人なんだろう。
「でも…」
仕事でお邪魔しておいてご馳走になるのも申し訳ない。
「ボタンだって付けて貰った事ですし、そのお礼という事で。ねっ?」
と歯磨きのCMに出てきそうな爽やかな笑顔で言われたら…
「では、今回はご馳走になります。ありがとうございました。」
「今回と言わず次回も是非。楠原さんと過ごす時間は仕事の打ち合わせといえとても楽しかった。今後ともどうぞ宜しく頼みます。」
どこまでも紳士的な五嶋係長の余韻に浸りながら私は会社へと戻った。
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