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「そうか…やはり隠していてもバレるものか。しかし知られたからにはとことん付き合って貰おうか?地獄の果てまでたっぷりとな?」
さっきまで穏やかに話していたおじいさんが纏うオーラを一瞬で黒くする。
「えっ…、じ、地獄、果て…は、果て?」
「ああ、そうさ。このまま帰す訳にはいかねぇなぁ。」
ドスの効いた声でそう言いながらスーツのジャケットの内側へ手をスッと入れる。
こ、これはピ、ピストルが出て来てバーン!
とか?
そ、そ、それとも刃物が出て来て指をスパーン!
とかなのぉ?
思わず頭を抱えて目をギュッと閉じた。
あれ?
いつまでたってもバーンもスパーンも無い。
恐る恐る顔を上げるとーーー
「これを。」
おじいさんがジャケットの内側から差し出してきたのは一枚の名刺だった。
「へっ?」
訳がわからない状況に聞こえてきたのは仁さんの笑い声。
「クックックッ…」
「な、なに笑ってんですか…」
声が上ずって上手く出せない。
「いや、お前、そりゃ笑うだろ。それにしてもじいさんも質が悪いんじゃねぇの?」
「いやぁ、申し訳ない。胡桃沢くんから彼女の事は聞いてはいたけれど話の通り、なかなか面白そうな勘違いをしているからつい乗っかってしまった。ハハ…申し訳ない。さっ、改めてこれを。」
少し震える手でその名刺を受け取って見てみると…
「ええっ!」
そこに書いてあったのは組長ではなく会長だった。
それも私がリストラにあった大手商社もが傘下にはいるほどの大企業グループのトップ。
目の前に座りイタズラげな顔で笑うおじいさんはそこの会長だった。
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