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「お前さぁ、」
そう言うとぐっと顔を近付けてくる。
「な、何ですか…」
近づかれた分、一歩下がって聞き返すと
「お前の頭ん中、ほぼほぼだだ漏れてんぞ。」
「へっ?だだ…漏れ?」
「言っとくけど、お前んちに上がり込んで襲うとかねぇから。それとも…お望みならそうするけど?」
ニヤリと笑うとスッと伸ばした人差し指で私の顎先を掬い簡単に上向かせる。
「えっ…いや、その、お望み…ません!」
しどろもどろながらに答えると、
「バーカ。本気にすんな。アホらし。じゃ、俺行くわ。」
私の顔を上向かせていた人差し指をあっけなく離すと今、やって来た方向に向かって歩きだす仁さん。
「あの…どちらに?」
もしかして私がちゃんと家に入るのを確かめに?
実は紳士だとか?
私のご都合主義な思考は次の言葉であっけなく崩される。
「俺んち、あれ。悪いけどそこの道の向こう側な、庶民さん?」
そう言う仁さんの目線の先にはこの辺りでも一際、目を引くタワーマンション。
「えっ、もしかして…」
「そっ、悪いけど俺んちそこ。いつもならそこの道路越えてこっちにくることねぇんだけど。まぁ、社長として部下がちゃんと無事に家に入るまで見届けねえとな。そういうことだ、理解したか、新入り?」
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