☆ラッキーアイテムは大きめのカバンです!

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「うぅ…ムカつく…」 「なんか言ったか?」 「いえ、別に。」 言いたいことは山ほどある。 けれど言えるわけない。 確かに今、タクシーで越えてきた道路の向こう側にはここ数年で建てられたいくつものタワーマンションがそびえ立っている。 そして、道一本渡ってこちら側は急に下町感溢れるザ、庶民エリア。 まぁ、なんだかんだ言っても仁さんも社長なんだし? 「ほら、見ててやるから早くマンションに行けって。」 ほんっと、勝手なことばかりいって…ムカつく。 なのに、こうしてちゃんと家に帰るまで心配してくれたり…調子狂うよね。 「ほんとにすぐそこのマンションなので大丈夫ですよ。仁さんもお疲れでしょうからどうぞ向こうの世界へお戻りください。では、お疲れさまでした!」 一気に言うとくるりと向きを変え、数メートル先のマンションへ歩きだす。 きっと仁さんのことだ。 私が入るまで見てるだろう。 マンションのエントランス前まで来て、振り返った。 やはり仁さんは腕組をしてこちらを見ていた。 ほらね、意地悪なことばかり言う癖にこう言うところ責任感あるというか優しいんだよね。 いつかのブラウスもそうだったし。 「うち、ここなので。ほんとにもう大丈夫です。ありがとうございました。おやすみなさい。」 頭を下げてエントランスへ入ろうとしたら 「今日は助かった。また頼むわ。早く風呂入って寝ろよ。」 仁さんはそう言うと今度こそ向こうの世界へと戻って行った。 っとに…えっ、て言うか…次回も? 「次回もあるんですかー?」 仁さんの後ろ姿に呼び掛けるとただ後ろ手に手を振るばかりだった。 「っとにもう、勝手なんだから。」
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