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「じゃあ、問題ないな。今後の事も考えて恋人設定でいいだろ?それともーーー」
「それとも?」
「フリじゃなくて、本当に俺の女にしてやろうか?ほら、」
と、五嶋さんといた時にも見せたあの優しい目で見つめ、パフェを一口掬ったスプーンをこちらに差し出す。
「…っ、え、えっと、」
これ、アーンってやつ?
えっ、なに?
仁さん、酔ってるよね?
だって、そんな甘い顔で言うなんて…
だけど私の戸惑いなんてお構い無しに仁さんはスプーンをさらに口元へ持ってくる。
アーンて食べれば良いの?
それでもなくても今までこういうのされたことないし、どうしたらいいのかわかんないよ。
て言うか、仁さん酔っぱらってんだしアーンする?そう思い口を開けようとしたら、
「って、やるわけねぇだろが。」
私の目の前に差し出されていたスプーンはあっという間に仁さんの口の中へ。
「あっ…」
「なに?そんなにアーンってされたかったか?」
そう言いながら食べた時に口の端についた生クリームを仁さんは舌でペロリと舐めながらこちらをじっと見る。
…む、無理。
「も、もう、からかうのやめてください。」
これ以上、耐えらんないと思い切り俯くと何も言ってこない。
ん?
そっと顔を上げて目の前の仁さんをみると、パフェのスプーンを握りしめたままテーブルに突っ伏していた。
「はぁ…もう、やめてよね。私一人、ドキドキしてバカみたいじゃん。」
ホッとしたような…寂しいような…
って、なんで寂しいのよ!
まだ暫くはここから動けないなと判断した私は複雑な思いを抱えながら珈琲のお代わりを入れるため席を立った。
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